お金医師向け

【医者は高給取り?】物価は上がるのに、医師の給料だけ上がらない理由【答えは構造】

written by じん
【医者は高給取り?】物価は上がるのに、医師の給料だけ上がらない理由【答えは構造】

「医者です」。そう言うと、だいたい9割9分こう返ってくる。「いいなー、お金持ちじゃん」

……いや、待ってくれ。

最低賃金は毎年上がる。物価も上がる。世間は賃上げに舵を切り出してる。なのに我々医師の手取りだけ、置いてけぼり。むしろ「減った」って声まで聞こえてくる。

医者なのに、なんでなんだ?

【世間】最低賃金+6.2%、大手の賃上げ5.39%

店先に掲げられた求人サイン

まず、外の世界の話から。最低賃金、ちゃんと見たことある?毎年しれっと上がってる。

上位10県下位10県
1東京1,22638岩手1,031
2神奈川1,22539秋田1,031
3大阪1,17740長崎1,031
4埼玉1,14141鳥取1,030
5千葉1,14042佐賀1,030
6愛知1,14043青森1,029
7京都1,12244鹿児島1,026
8兵庫1,11645高知1,023
9静岡1,09746宮崎1,023
10三重1,08747沖縄1,023

2025年度の全国平均は 1,121円。前の年から +66円(+6.2%)。とうとう全部の県で1,000円を超えた〔1〕。最高の東京は1,226円。いちばん低い県でも、もう1,023円ある。

交差点を渡るたくさんの人々

大企業はもっとえげつない。2025年の春の賃上げ交渉(春闘)では、大手の給料が平均 5.39% 上がった。2年連続の5%超え〔2〕。世間は物価高に追いつこうと、本気で財布を厚くしにきてる。

で——我々の業界は、、、?

【現実】医療の値段は10年で+2%。このザマ

空っぽの財布を開いて見せる手元

結論から言う。医師の給料は、この賃上げ祭りから、完全に置いてけぼり。証拠がこれ。

世間の賃金も物価も上がるのに、医療の値段はほぼ横ばい(2016年=100) 100110120130140 最低賃金 +28% 物価 +11% 医療の値段 +2% 20162018202020222024(年度)
〔データ〕最低賃金=厚生労働省「地域別最低賃金(全国加重平均)」、物価=総務省統計局「消費者物価指数(総合)」、医療の値段=中医協・厚生労働省「診療報酬改定(本体)」より、2016年を100として指数化。数値は概数。

見ての通り。最低賃金はこの10年で3割近く伸びた。物価もどんどん上がってる。なのに 医療の値段(=診療報酬。国が決めてる)は、ほぼ真横

ここが大事なポイント。医者の給料の元手は、病院の売り上げ。その売り上げを決める「医療の値段」が上がってないんだから、給料も上がりようがない。この差が、全ての元凶。

病院の廊下を歩く医療スタッフ

給料そのものの数字も見ておく。

  • 国の統計だと、医師の平均年収はここ数年 1,300万〜1,400万円台を行ったり来たり〔3〕。世間が毎年5%ずつ財布を厚くしてる横で、ほぼ横ばい——年によってはむしろ減ってる。
  • 研修医(1年目)だと平均年収 およそ430〜480万円。月給だと市中病院で約 29.8万円、大学病院だと約 15.4万円(手当を除く)って調査もある〔4〕
  • しかも当直で稼ごうにも、回数は自由に増やせない。研修医はそもそもバイト禁止。逃げ道がない。我慢一択。

【実例】友人の手取りは、20万円を切った

大学病院勤めの友人は、当直も時間外もほぼない科を回ってる間、宿舎代を引かれて 手取りが20万円を切った と言ってた。最低賃金で働くバイトと、いい勝負。

「働いた時間のわりに、薄い」。そう感じてるなら、その感覚は正しい。気のせいじゃない。

なぜ上がらない?答えは「構造」でしかなかった

飲食店のカウンターに座る客たち

全ての商売の売り上げは、値段×売れた数で決まる。ラーメン屋なら、一杯の値段×売れた杯数。コンビニも車屋も、突き詰めればこれ。

医療も同じ。ただし、決定的な違いが一つある。 医療は、この「値段」を 国が決めてる。診察も、手術も、薬も、全部に国が値段をつけてる。ラーメン屋なら「明日から一杯1,200円です」って自分で値上げできるけど、病院には、それができない。

で、国はこの値段をどうしてきたか——

  • 医者の手間賃にあたる部分はプラス。といっても年0.4〜0.9%のスズメの涙
  • 薬まで含めた「全部」だと、2016年度から2024年度まで5回連続——足かけ10年のマイナス〔5〕。2026年度にやっと12年ぶりのプラス(+2.2%)になったけど、10年置いていかれた後の、やっとの一歩

物価が年2%以上で上がってるのに、この上げ幅。見合うわけがない。

国会議事堂

さらにタチが悪いのが、この先。 高齢者が増えて、国が払う医療費はふくらみ続ける。でも、財布の中身(税金や保険料)には限りがある。かといって、医療の質は落とせない。 だったら国はどうする?——医療の値段を抑えて、節約するしかない。 つまり我々の稼ぎは、物価の上がり方を考えれば、この先も実質目減りし続ける可能性が高い。悲観じゃない。仕組みを直視した、ただの現実。

実際、節約の流れで、地域や病院によっては——

  • 専攻医の 採用人数が絞られる
  • 非常勤(外勤・バイト)から切られる/バイトの単価が下がる

そんな動きが起きてる、とかいないとか。

で、待ってても上がらない

山並みの先を見渡す人のシルエット

ここで「誰のせいだ」と犯人探ししても、1円も増えない。意味がない。 大事なのは、まず 知ること視野を広げること。それだけ。 仕組みのせいで上がらないなら、打てる手も、知らなきゃ打てない。

長い目で見れば、医療界が 保険のきかない自費の医療(自由診療) に活路を求める流れも、たぶん止められない。海外には、一部の治療や材料を保険から外して自費にすることで、制度を回してる国もある。日本もいつか、保険の線引きが変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。少なくとも今のところ、医療の質を守るのが最優先で、医療者の財布のために舵を切る気配はない。

「給料、上がらねえ」とぼやくのと、「仕組みを知って、自分で動く」のと。この2つは、5年後にとんでもない差になる。

【結論】じゃあ、どうするか

チェス盤を前に考え込む人

当たり前を疑って、思考を止めるな——この記事で言いたいのは、結局それだけ。

「医者は安泰」「待ってればそのうち上がる」。その「当たり前」は、もう仕組みごと崩れ始めてる。だから、知って、考えて、自分で選ぶ。


出典:〔1〕厚生労働省「地域別最低賃金」2025年度(令和7年度)改定/〔2〕2025年春闘 大手企業賃上げ率(経団連 最終集計)/〔3〕厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(医師)/〔4〕研修医の給与に関する各種調査(厚生労働省資料ほか)/〔5〕中央社会保険医療協議会・厚生労働省「診療報酬改定」資料(ネット改定率、2026年度改定を含む)。 ※数値は公表時点・概数で、時期により変動します。最新は各公式でご確認ください。本記事は一般的な情報・考察です。写真:Unsplash

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